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童謡ってすてき!! ~ 童謡歌手がお贈りする 私のお勧めの5曲

童謡、それは子どもたちのための歌の宝庫。
その中から現代を代表する童謡歌手たちが選りすぐり、「わたしのとっておきの歌」をご案内します!!

バックナンバーはこちら !! → 2022年

田中久美子

透明感あふれる 癒しの歌声

幼少の頃より日本舞踊の師範である母の影響を受け、様々な舞台に立つ。神戸放送児童合唱団に入団。小学6年生の時に東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」にリトルコゼット役に出演。 大阪音楽大学音楽学部声楽学科卒業。NHK東京放送児童合唱団で非常勤講師を務める傍ら、NHKイベントおかあさんといっしょ「ぐ~チョコランタン小劇場」、いないいないばぁっ!「ワンワンとあそぼショー」などの歌のおねえさんとして全国各地にて公演。現在は童謡歌手としてコンサート活動のほか、オーケストラや吹奏楽のファミリーコンサートの司会や歌を担当。また後進の育成やおかあさんコーラスの指導にも力を注いでいる。
神戸国際大学附属高等学校非常勤講師、スガナミ楽器講師、ハーモニーフレンズ主宰、ママさんコーラスぽぽふぁ指揮者。 全国童謡歌唱コンクール(現 童謡こどもの歌コンクール)大人部門銅賞、童謡の里たつの童謡歌唱コンクール最優秀歌唱賞・童謡協会会長賞、第42回日本童謡賞特別賞、ミュージックフェスティバル99 童謡部門グランプリ、神戸ユース賞他受賞。

七つの子 作詩:野口雨情/作曲:本居長世

明治37年生まれの私のおばあちゃん。いつも着物を着て、仕事で忙しい両親に代わり私のお世話をしてくれました。おばあちゃん子の私は、おやつをつまみながら、レコードで童謡をたくさん聴いていました。しかし「七つの子」はレコードではなく、おばあちゃんの歌声が記憶に残っています。この歌を歌うと、ふと、あの頃の自分にタイムスリップ。なんともいえない懐かしい気持ちに…。
ゴミの日になると、大きくて黒いカラスは恐怖でしかありませんが、この歌に出てくるカラスはこどもを温かく包む優しいカラス。全ての生き物がこどもを思う気持ちは一緒なのですね!

にじのむこうに 作詩・作曲:坂田修

歌のおねえさんになることを夢見ていた私。小学校の卒業アルバムにも「歌のおねえさんになる」と書いていたほど。大学卒業後、上京しNHK東京放送児童合唱団でお手伝いしながら、おかあさんといっしょ「ぐ~チョコランタン小劇場」のオーディションを受けました。その時課題曲だったのが「にじのむこうに」。神戸出身の私が東日本各地を歌のおねえさんとして旅させていただき、いつもステージではこの曲からスタート。初めて出会うこどもたちと元気に「雨があがったよ?」と歌うと、みんな笑顔になり虹のアーチがかかります。こどもたちと繋がれる、そんな元気がでる歌です。

まっかな秋 作詩:薩摩忠/作曲:小林秀雄

父、母、私、妹の4人で歌った思い出の一曲。「童謡こどもの歌コンクール」のファミリー部門に参加し、全国大会に出場。大会に向けての練習では、私や妹が先生役。父が仕事から帰ってくるのを待って、夜遅くに練習していたことを思い出します。「お父さん!リズムちがうで!もうちょっとニコニコと!」なんて光景が。秋の景色が頬を染める大きな夕陽が見えてくるこの歌。途中、二重唱になるハモリも魅力的です。

かわいいかくれんぼ 作詩:サトウハチロー/作曲:中田喜直

「きみの声は、童謡にぴったりだよ。これからも歌い続けてね」と、6年生の私に優しくお声をかけてくださったのは作曲家の中田喜直先生。当時たつの市で行われていた「童謡の里たつの童謡歌唱コンクール」に初出場し最優秀歌唱賞と日本童謡協会会長賞をいただき、その帰り際に短い時間ではありましたがお話させていただくことが出来ました。その後、大学生になり何度か先生とコンサートでご一緒させていただくことも出来ましたが、いざ上京してすぐ、先生は旅立たれました。その後、中田喜直先生の作品のコンサートで、こどもの頃から大好きだった「かわいいかくれんぼ」を歌い、作曲家の伊藤幹翁先生に「くみちゃんの声は中田先生の可愛い童謡がぴったりだよ」とおっしゃっていただきました。なんだか心にストンと落ちたような気がしました。「だんだんだぁれがめっかった?」めっかったのは、私が童謡を歌う理由かもしれません。

手紙をだしたよ おばあちゃん 作詩・作曲:小西欣一

童謡の里 たつの市で行われる「三木露風賞新しい童謡コンクール」の第1回で生まれた曲です。動物園に行ってきたことをおばあちゃんに手紙を書いてしらせるというストーリー。おばあちゃんが読めるように大きな字で書いたり、ぞうさんやおさるさん、いっぱい伝えたいことありすぎて書ききれなかったり、そんな気持ちを早く届けたいと「ゆーびーん」と歌うところは本当に気持ちいい!こどもの心になってしまう、そんな一曲です。

楽譜・音源情報

大和田りつこ

【童謡コンシェルジュ・永遠の歌のおねえさん】

NHK教育テレビ「たのしいきょうしつ」でデビュー。その後、同「ワンツー・どん」、TBSテレビ「ワンツージャンプ!」などの幼児番組に「歌のおねえさん」として長年出演。童謡コンサートをはじめ、学芸関係CD、アニメーション主題歌、コマーシャルソングなどでその歌唱力には定評がある。2万人の鼓動〜TOURSミュージカル『赤毛のアン』などの舞台に出演。シニア世代向け『ほほえんで すこやかにコンサート』を全国展開。全国の幼稚園園歌の歌唱は300曲以上にのぼる。第22回日本童謡賞特別賞、人権擁護コンサートの功績により人権擁護功労賞を受賞。現在NHKラジオ第一放送「マイあさ!」に「童謡コンシェルジュ」として出演中。歌とお話で童謡の魅力を親しみやすく紹介し好評を得ている。

「マイあさ!」番組HP
https://www.nhk.jp/p/my-asa/rs/J8792PY43V/

子鹿のバンビ 作詩:坂口淳/作曲:平岡照章

~初めて出会った童謡

物心ついた頃から、夢はただひたすら「歌のおねえさん」になることでした。「子鹿のバンビ」の絵本の付録のソノシートを擦り切れるほど聴いて、一緒に歌って、いつか絶対に「歌のおねえさん」になるんだと、心に決めていました。

1951年(昭和26年)に発表された「子鹿のバンビ」はアメリカで公開されたディズニー映画「バンビ」のイメージソングとして発表されたそうです。物語の様に綴られたこの曲を歌うと、すぐにバンビの住む素敵な森の中の一員になれました。3拍子のリズムの軽快さも加わって、70年以上たった今でも、詩も曲も色あせることなく、こどもたちに素敵な夢を送り続けています。

おかあさん! 作詩:星乃ミミナ/作曲:伊藤翁介

~初めて出会った感動の童謡

1991年(平成3年)に日本童謡協会の「童謡祭」で発表されたこの歌を初めて聴いたときに、身体中が感動で震えるのを覚えました。わたしの愛する母は「歌のおねえさん」になるのを見届ける様に天国へ旅立ってしまいました。その母へのすべての思いを美しく綴った星乃ミミナさんの「詩」に涙したのを覚えています。幾つになっても母への思いは大きく、この歌を歌うたびに胸がいっぱいになります。

あおいそらにえをかこう 作詩:一樹和美/作曲:上柴はじめ

~初めて作った童謡作品

NHK教育テレビ「たのしいきょうしつ」の「歌のおねえさん」としてデビューし、歌やお話だけでなくダンスはもちろんのこと、ナレーションやコントなど、たくさんのことをこの番組で学ばせていただきました。またTBSテレビの幼児番組「ワンツージャンプ!」では毎日、生放送で、スタジオに通ってくる幼稚園児とともに歌を歌ったり、リトミックをしたり、生の現場での貴重な経験をさせていただきました。そしてNHK教育テレビの小学1年生のための音楽番組『ワンツー・どん』に田中星児さんと出演。思い返せば、この3つの番組での経験が、今の私の全てを形作っていると言えるでしょう。

「ワンツー・どん」に新しい(若い)「おねえさん」を迎えるにあたり、その教育係として、また番組の構成、台本作成に携わる機会をいただくことになり、最初に「ワンツー・どん」のテーマソング「げんきななかま」の詩を書かせていただきました。新1年生が初めてクラスの友だちと元気に行進できる歌、としてかいたのが「あおいそらにえをかこう」です。この曲は今でも音楽会や学芸会などで演奏していただき、「エイヤー!」の掛け声とともに、こどもたちを元気に、笑顔にするおすすめの1曲です。

私もいつか〜母に捧げるバラード 大和田りつこのために 作詩:星乃ミミナ/作曲:湯山 昭

~初めて書き下ろしていただいた童謡

「おはながわらった」や「あめふりくまのこ」の作曲家湯山昭先生がサトウハチロー賞を受賞されたことを記念して開催されたコンサートの折、「りつこさんのための曲をかいてあげましょう。好きな『詩』を持っていらっしゃい」と夢の様なお話を頂いて出来たのが、タイトルに「大和田りつこのために」と書かれた「私もいつか~母に捧げるバラード」でした。

「おかあさん!」の詩人星乃ミミナさんの詩集『花かんむり』の「私もいつか」の詩を見たとき、この「詩」を歌いたいと心から思いました。そして湯山先生のお母様への思いと私の母への思いが重なり、大曲ではありますが素晴らしい作品に出来上がりました。

日本語の美しさ、日本の四季折々の素晴らしさ、ふんだんに散りばめられた色彩の数々、そして「おかあさん」への思いの詰まった素晴らしい作品です。

きこえるかしら 作詩:岸田衿子/作曲:三善 晃

~一生の宝物 名作アニメーション「赤毛のアン」主題歌

最後の作品です。わたしの童謡歌手人生の中で、この作品との出会いの大きさは計り知れず、1979年の誕生から今までこの作品に育てられ、この作品に力を貰って、歌い続けることができました。アニメーションの主題歌が童謡?と、思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、岸田衿子作詩、クラッシック界の大巨匠三善晃作曲のこの作品は、あらゆる音楽のジャンルを超えた名曲中の名曲だと確信しております。

新聞紙ほどもあるスコア譜を両手でめくっていらした三善先生。フルオーケストラの録音は、今思い返しても鳥肌が立つほどの迫力でした。歌詞のなかに、物語の壮大な景色が織り込まれ、日本語のアクセントを重視し、1コーラスと2コーラスのメロディーはそれぞれのアクセントに則り(のっとり)同じメロディーでは歌えないという難曲でした。

この作品を歌わせていただいたことがご縁で、TOURSミュージカル「赤毛のアン」の舞台に20年もの間出演させていただき、全国の皆様に感動をお届けすることもできました。2023年11月にはフルオーケストラによるアニメ「赤毛のアン」オーケストラコンサートも開催されることになっております。

楽譜・音源情報

たいら いさお

『歌の旅人』

長崎県佐世保市出身。東洋大学卒。文学座附属演劇研究所卒。
1976年歌手デビュー。1977年よりNHK「おかあさんといっしょ」3代目“うたのお兄さん”で活躍。”アニソン歌手”としても「復活のイデオン」「銀河旋風ブライガー」など、多数の主題歌がヒット。現在も愛唱されている。その後、童謡歌手としても各地でコンサート活動を展開。”童謡祭”はじめ全国各地の音楽祭を軸に童謡界の貴重な男性歌手として活躍している。また、近年はライブコンサートやシニア向けの”歌う会”や”講座”も好評である。メッセージ性のある癒しの歌声で多くの観客を魅了している。今後も、子供の歌・童謡抒情歌・アニソンまで、世代を超えたエンターテイナーとしての幅広い活躍が期待される。2017年CDボックス「童謡誕生ストーリー」監修・出演。現在、「童謡文化の会」講師、「葛飾区シニア活動支援センター」講師、「文京童謡の会」講師。また、洗足学園音楽大学非常勤講師として後進を育成している。
(2023年3月現在)第25回「日本童謡賞・特別賞」受賞。

アメフリ 作詩:北原白秋/作曲:中山晋平

男の子の「ひとり語り」で作られた歌ですが、ストーリー性のある作品でお気に入りの一曲です。母親、カバン、友だち、柳、そして雨、大切な蛇目傘など、映像が浮かんできます。それぞれが主人公との”つながり”があって、人と人も、人と環境もつながって生活していることが伝わってきます。しかも、4・4・5の音数律で”ピッチピッチチャップチャップランランラン”を除くと、白秋は130文字でそれらを表現しています。晋平の作曲はとても心地よく、躍動感を覚えます。学校コンサートで「相手を気遣う」ことを考えるきっかけとして”考える歌”で披露したことがあります。子どもたちからたくさんの反応があって、一世紀ほど前の作品が現代に通じることを実感しました。

サッちゃん 作詩:阪田寛夫/作曲:大中 恩

この歌は男性歌手にもっと歌ってほしいですね。作詞の阪田寛夫は「男の子の歌は元気いっぱいの歌が多いので、優しい男の子の歌をつくろう」との気持ちで作ったと聞いています。作曲の大中恩も同じ思いで作曲したようです。私自身は”淡い初恋の歌”だと思って歌っています。子どもの頃、気になる子の名前を知っただけでもドキドキしていましたね。ましてや言葉を交わすなんてはずかしい。そんなピュアな時代には決して戻れないけど、サッちゃんの歌が小さい頃に運んでくれます。おかしい、かわいそう、さびしい、その訳は、サッちゃんが〝ちっちゃい〟から。男の子の想いが伝わってきて、優しくなれそうな歌ですね。主人公は少し年上の男の子かな?

シャボン玉 作詩:野口雨情/作曲:中山晋平

演奏が1分以内で終わってしまう作品が、童謡にはたくさんありますね。演奏会でそんな歌をソロで披露するとなると結構大変です。「シャボン玉」もそんな一曲です。作詞については、夭逝した雨情の子どもへの鎮魂歌ではないか(諸説ありますが)とのお話は、多くの方がご存知かと思います。少なくとも、子どもへの親の慈愛のようなものは伝わってきます。いつしか”楽しい歌の中に切なさを感じる歌”として歌うようになりました。童謡を歌うことは”歌のこころ””自身の内にあるこころ”を歌うこと。結構しんどいことですが、これこそ童謡を歌う醍醐味だと最近思っています。

ぞうさん 作詩:まどみちお/作曲:團伊玖磨

童謡は”一分間のドラマ”。歌謡曲のフレーズではありませんが、童謡は究極の言葉選びと音・リズム選びで作られています。「ぞうさん」はそんな一曲ですね。演奏家にもよりますが、40秒程で演奏は終わります。この短い時間に、歌に込められたであろう”思い”を伝えることはとても難しいんです。コンサートで歌唱の機会を得た時、もっとも緊張します。自分が自分であることの喜びと誇り、やさしさを、象を通して表現しているように思えるのです。他者に”鼻が長い”と揶揄されても、自分らしさを知っている象は、大好きなお母さんも”長いのよ”と明るく切り返します。歌う側も、ぞうさんのように誇らしい心を持って歌っていきたいと思います。

北風小僧の寒太郎 作詩:井出隆夫/作曲:福田和禾子

この歌は、私が「おかあさんといしょ」”三代目うたのおにいさん”のオーディションの折、自ら選んだオーディション曲の一つでした。以来、自身の大切な一曲として歌い続けています。この歌の歌碑が、長野県松原湖畔の水辺公園にあります。作詞の井出隆夫はご当地の小海町の出身で幼少期をこの地で過ごしました。2013年、私は井出氏と共に歌碑のある松原湖畔を訪れました。私の歌が歌碑で流れるようになったためです。その折、井出氏が「小さい頃、この道の角に”木”の電信柱があって、冬になると雪がヒューヒューと舞っていたんだよ!」と、お話してくださったことが懐かしく思い出されます。「カンタロー!」

楽譜・音源情報

岡崎裕美

歌声とトークで幸せを届けるエンターテイナー

東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。在学中は畑中良輔氏に師事、ドイツリート、オペラ専攻。卒業と同時にNHK教育テレビ「なかよしリズム」の歌のお姉さんとしてデビューし、6年間レギュラー出演。以後、NHK「みんなのうた」「みんなの童謡」「手話でうたおう」、新潟テレビ21「ひろみおねえさんとうたおう」に7年間レギュラー出演する他、静岡県民テレビ「岡崎裕美のおはようドレミ」、テレビ朝日「題名のない音楽会」に出演。童謡、唱歌、子どもの歌、ミュージカルナンバー等の歌とトークで世代を超えたコンサートで活動。ライフワークの音楽朗読劇では、「星の王子さま」「力えるくんのたからもの」他を発売。また、保育「音楽表現」の分野では、手遊び、歌遊び、ふれあい遊び、表現遊び、パネルシアター、音楽影絵シアター、音楽紙芝居シアター、手話ソング、リズムダンス、の振り付け等、保育者を対象とした講習会を長年にわたり全国的に講演。「それいけ!アンパンマン映画」のキャラクターの振り付けも毎年手掛けている。平成音楽大学、長崎大学、目白大学、東洋英和女学院大学、他で教鞭を執り、現在、千葉敬愛短期大学現代子ども学科教授。第23回日本童謡賞特別賞受賞。ミュージックフェスティバル2004童謡グランプリ受賞。2016年法務大臣より人権擁護功労賞受賞。(社)日本童謡協会賛助会員、全国大学音楽教育学会会員、日本保育学会会員。

冬景色〈文部省唱歌〉 

私が歌うことに目覚めたのは、今でもはっきりと覚えています。それは、小学校の音楽の時間でした。先生がお手本で歌ってくださった後、先生のピアノ伴奏に合わせてクラス全員で文部省唱歌「冬景色」を歌った瞬間です。歌い出しの♪さぎりきゆる みなとえの~~、の歌詞を、当時理解できていたかどうかは別として、声に出して歌うことの快感、“歌うって気持ちいい!と、声帯を通って体にビビビッ!と電気が走りました!その日の放課後はいつもより早く走って家に帰り、雨戸を閉めて、音楽の教科書を手に一人で思い切り歌ったのです!やっぱり気持ちいい!何度も何度も歌いました。歌うってこんなに気持ちいいことなんだ!と実感。その音楽の先生の歌のお手本が良かったのかもしれませんが、残念ながら思い出せません。ごめんなさい…先生!(/ω\)そして、歌うことが気持ちいいと思って歌い続けてこられたのは、あの日の先生のお陰です。ありがとうございました…先生!(^_^)/

ヘイ!タンブリン 作詩:吉岡治/作曲:湯山昭

この曲は、NHK教育テレビ「なかよしリズム」という、幼稚園・保育園向けの番組から生まれた曲です。この番組は、歌のお兄さん5人とお姉さん1人が歌って踊るミュージカル的な音楽番組で、私は大学卒業と同時に、6代目の歌のお姉さんとしてデビューしました。ダンスの振り付けは、当時、マッチや俊ちゃん等のジャニーズ系アイドルやピンクレディーの振り付け等で引っ張りだこの振付師だった西条満氏。今思うと、当時としては画期的な番組でした。このヘイ!タンブリンは、代々番組で歌われてきた曲ですが、私は、タンブリンを持って踊る西条氏の振り付けが体に沁み込んでいて、今でも正確に再現できます(笑)。歌とリズムとダンスで子どもたちに音楽の楽しさを伝えることの素晴らしさを教えていただきました。この番組でデビューできたことに感謝です!

くらげのさんぽ 詩人:小林純一/作曲:團伊玖磨

中学から声楽を習い始め、音楽高校、音楽大学に進んだ私は、バリッバリッのクラシックの発声で歌うこと10年!私は、全身に声楽の発声がガッツリ染みついたまま、友人の付き添いで受けたNHKの歌のお姉さんのオーディションに合格し、突然、童謡や子こどもの歌をうたう人生が始まりました。すると、たちまち子どもの歌のレコーディング。スタジオに入ったものの、歌う声は立派なファルセット!♪くらげのさんぽどころではなく、カチンコチンの硬いくらげの軍団が来た!というイメージ。笑い事ではない!聴いていた先生が焦って私のところに来てくらげのふわふわした説明をし、やっとくらげのイメージで歌うことができた!と思うけど、どうだったか(汗)それ以降、歌は立派な声で歌うだけではなく、どう表現するかが面白いということを知った!(*^^)v

コンコン クシャンのうた 詩人:香山美子/作曲:湯山昭

5種類の動物さんが出てくるこの歌は実に楽しい。何が楽しいかというと、それぞれの動物のイメージの声で表現しながら歌うこと。小さいマスクのリスさん、細いマスクのツルさん、丸いマスクのブタさん、大きいマスクのカバさん、長いマスクのゾウさん、歌手にとってこの表現の楽しさはたまらない!特に私が得意なのは、ブタさん!ブタさんの鳴き声で歌えます!と言ってもよくわからないと思いますので、いつか生声で聴いていただきたいです。それから細いツルさんも得意です!つまり、何が楽しいかというと、その動物さんに成りきること!「おはなしゆびさん」も5人に成りきって歌うことが楽しい!どんな歌でも、「表現する」って奥が深いですね。私、人や動物や物、何にでも成りきって歌えますよ(笑)

おもたいお月さま 作詩:鶴岡千代子/作曲:伊藤翁介

「オレンジジュースのみすぎて まんまるおもたい おつきさま…」と歌い出すこの歌、衝撃的な歌い出しです。このフレーズを聴いただけで、な~んて素敵!と魅了されました。鶴岡千代子先生(作詞)と伊藤翁介先生(作曲)の作品です。お月様をうたった歌は他にもたくさんありますが、お月様がオレンジジュース飲み過ぎて真ん丸く重たくなったという可愛くて面白い発想にシビレました。初めて聴いたのは、後輩の童謡歌手、春口雅子さんの歌唱です。彼女の清潔感溢れる透き通る瑞々しい声で歌われたこの曲は、永遠に私の記憶に残る歌になりました。私も歌ってみたいと思い、ステージで何度か歌いましたが、歌っている間中、いつも頭の中に響いているのは彼女の歌声です。春口雅子ちゃんの歌声は一生忘れることはないでしょう。みなさんも是非歌ってみてくださいね。

楽譜・音源情報

土屋朱帆

『清楚さと品格を感じる真っ直ぐな歌声』

山梨県富士吉田市出身。国立音楽大学声楽学科卒業。淑徳幼児教育専門学校卒業、卒業時に特別賞受賞。第19回全国童謡歌唱コンクール大人部門金賞及び寛仁親王牌受賞。2005年板橋区文化優秀賞受賞。第5回中田喜直記念コンクール銀賞受賞。2006年東久邇宮記念賞受賞。2010年川口市芸術奨励賞受賞。2014年第44回日本童謡賞・特別賞受賞。日本の歌を中心とした楽しいお話を交えながらのコンサート、“自然で語りかけるような歌唱”には定評があり、“心にすっと届く澄んだ歌声”は聴く人を魅了している。現在、東京成徳短期大学非常勤講師、神奈川県川崎市にて「土屋朱帆・童謡音楽教室」を主宰。

金魚の昼寝 作詩:鹿島鳴秋/作曲:弘田龍太郎

家庭の教育方針で、保育園にも幼稚園にも通わずに育ちました。両親は自営業で仕事に忙しく、私は大好きな祖父と毎日朝から晩まで過ごしました。お散歩、工作、足し算ドリル、時には親戚の家でお茶を飲みながら世間話、まるで「おじいちゃん保育所」でした。祖父と過ごした時間は宝物。

その頃の大切な日課の一つはテレビで「おかあさんといっしょ」を見ながら一緒に大きな声で歌うこと。そんな私を、母が近所のピアノ教室に連れて行き「歌が好きだから」と歌のレッスンをお願いして通い始めたのは4歳になったばかりの頃。その初めてのレッスンで歌ったのは「金魚の昼寝」でした。歌えばたちまち、金魚をぼんやり眺める優しくゆったりとした時間が流れます。

クラリネットをこわしちゃった 訳詩:石井好子/フランス民謡

4歳で通い始めた歌のレッスン。初めての発表会で歌ったのが「クラリネットをこわしちゃった」でした。‟ドとレとミとファとソとラとシの音が出ない”という歌詞を歌いながら「パパの大事なクラリネットを壊しちゃったなんて、大変なことが起きてしまったなぁ」と少し戸惑ってしまった記憶があります。

時は流れ、音楽高校のある授業で‟クラリネットのような木管楽器は音を出すことがそもそも難しい”という話を聞いた時、ハッとしました。そうか、あのクラリネットは壊しちゃったのではなく、ただ音が出せなかっただけなのか!と。なんだか騙されたような、でも壊したわけじゃなかったのかもしれないと思い、ホッとした瞬間でもありました。

夕方のおかあさん 作詩:サトウハチロー/作曲:中田喜直

音大時代、イタリア歌曲やドイツ歌曲、オペラアリアなどを学んでいる中で徐々に感じた違和感。やがて‟日本語で歌をうたいたい。自分の原点である童謡をもう一度うたいたい。自分が幼い頃毎日聴いていた童謡を、今度は私が小さな子どもたちに届ける立場になりたい”そんな気持ちが湧き出てきたのです。

大学を卒業した年に自分を試したくてチャレンジした『全国童謡歌唱コンクール(現:童謡こどものうたコンクール)』に選んだ歌が「夕方のおかあさん」でした。このコンクールで金賞を受賞したことがきっかけで童謡歌手への道が開きました。2004年のことでした。

作曲者中田喜直先生(2000年没)の作品が大好きで、小さいころからたくさん歌ってきました。喜直先生、一度でいいからお会いしてみたかったです…。

ふじの山 作詩:巖谷小波/作曲者不詳

生まれ育った故郷は、山梨県富士吉田市。町全体が、富士山に向かってゆるやかな坂になっていて市内のどこにいても富士山に見られています。いえ、見守ってくれているのですね。小さい頃はその有難みも知らずに、あまりにも当たり前の風景を、言ってみれば‟ただの大きな山”と認識していただけでした。大人になるにつれて、富士山は日本だけでなく世界文化遺産としてもその価値を認められる山なのだということを知り、富士の麓で生まれ育ったことを誇りに思うようになりました。

あるコンサートで「ふじの山」を歌った時、作曲家の伊藤幹翁さんから「さすが毎日富士山を見て育っただけはある!日本一の立派な富士山が目に浮かんだ」とお褒めの言葉を頂いたことは、とても嬉しかった思い出です。

揺籠のうた 作詩:北原白秋/作曲:草川信

息子二人を子育てする中で、よく口ずさむ「揺籠のうた」。お昼寝の時間帯や夜寝る時に、かすれそうなほど小さな声で、ゆったりとしたテンポでこの歌を口ずさむと、必ずと言っていいほど3~4小節歌ったあたりで、2歳違いの息子たちは順番に大きなあくびをするのです。それがなんとも可愛くて微笑ましい!そして、2コーラス歌い終わるころには、スースーと2人の小さな寝息が聞こえてきます。

8歳と6歳になった今でも「ママと寝る」と言ってくれる二人に挟まれながら、久しぶりにベッドの中で口ずさんでみたら、1コーラス歌い終わる前にあっという間に夢の中へ。あと何年、隣で歌わせてくれるでしょうか。

楽譜・音源情報