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北欧ときめき情報〜Wind from the north Vol.10

Vol.10 この本を持ってノルウェー旅行に出かけませんか?

この季節、北欧では夏時間が始まり、イースターが終わると、一気に春となります。日ごとに木々が青々とし、花々が咲き乱れ、日照時間がぐんぐんと延びる、パワフルな季節です。

黒い水をたたえるフィヨルド、険しく切り立った山々、岩ばかりの海岸線、青く光る氷河、どこまでも続く森林、そして、そんな中にぽつんと立つ小さな一軒家。初めて見た西ノルウェーの風景は想像を絶するものでした。以前にも書きましたが、西ノルウェーで暮らし始めたころ、あまりの自然の大きさと厳しさに「とんでもないところに来てしまった……」と思ったものでした。それはチェコの作家チャペックにとっても同じだったようです。今回ご紹介するのは1936年夏にデンマーク、スウェーデン、ノルウェーを旅したチャペックの旅行記です。70年前の記録とは思えないほど今と変わらぬ北欧の風景や人々の暮らしが自筆のイラストとともに描かれています。コペンハーゲンやストックホルムでの滞在記ではなく、西ノルウェーの都市ベルゲンからヨーロッパの北の果てノールカップ(ノール岬)へと向かう沿岸船での旅に多くのページが割かれています。さすがにチャペックの人物描写はすばらしく、沿岸船に同乗した人々や寄港地の人々の様子は、「この人、知っている!」と、その人に実際に会ったことがあるようにさえ思えるほどです。そして、太陽が全く沈まない北極圏の白夜や船から見える荒涼とした風景の描写は圧巻です。今でも多くの観光客を集める沿岸船の旅。一度はこの本を手に、ゆっくりと船旅がしてみたいものです。またたとえ沿岸船に乗る機会がなかったとしても、この本を読むだけで旅をした気分になること請け合いです。

子どもたちの夢の部屋

北欧の子どもたちはとてもカラフルです。髪の色、目の色、肌の色がみんな違い、それに合った色の服を着ています。目の青色と合う色のスカートをはいたり、髪と同じ薄茶色のTシャツを着たりと、カラーコーディネートには目を見張るものがあります。実際、街の子ども服専門店のショーウィンドウには機能的でかわいらしく、そして、どこか洗練された服が並んでいます。子どもたちを見てみると一人として同じコーディネートの子どもはいません。また手作りの服を着ている子どもも少なくありません。「自分らしく、そして、他人とどこか違うこと」。この北欧の人々にとって大切な価値観を、子どもたちはこんなに小さなころから身につけていくのです。これは子ども部屋も同じです。素敵なカーテンにベットカバー、美しく配置されたおもちゃや小物。あの部屋を見ると、北欧の人たちが何を大切にしているのかがわかるような気がします。そして、親たちの心に余裕をもたらす社会の豊かさにも思いをはせることになるのです。この本では、コペンハーゲンの子ども部屋が紹介されています。登場する子どもたちの母親の多くがデザイナーであったり、建築家であったりと、一般的な子ども部屋より少しデザイン性の高いものとなっています。それでも、北欧の子どもたちの普通の暮らしを味わっていただけると思います。

バックナンバー

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イラスト:村越陽菜(むらこしはるな)