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北欧ときめき情報〜Wind from the north Vol.13

Vol.13 世界にひとつだけのあみ人形

この時期、いつの頃からか、日本では街中がオレンジや黒といったハロウィン色で飾られるようになりました。そんな賑やかさとは対照的に、ノルウェーで11月初旬に行われるのが「万霊節(諸聖人の日)」です。花屋にはシルバーグリーンを基調としたシックな花のリースと大きなキャンドルが並びます。あらしの前の静けさならぬ、クリスマス前の静けさを感じる晩秋。雪が降ることもありましたが、暖かいノルウェーセーターを着て、よく街や自然の中を歩きました。

前回ご紹介したノルウェーのデザインデュオ、アルネ&カルロス。彼らの日本語翻訳本第2弾は『アルネ&カルロスのあみ人形』でした。この本の翻訳時、実を言うと、私はあみ人形の良さがわかってはいませんでした。人形は、デフォルメされたものはともかく、人間の形に近づけは近づくほど苦手で、なかなか本の写真にも馴染むことができないまま、翻訳を進めていました。ところが翻訳本が出版され、その反響にびっくり。多くの方が本の通りではなく、本に掲載されている編み方を基に自分だけのあみ人形を作っていたのです。肌の色も、眼の色も、髪の毛も、洋服も、どれもオリジナルのあみ人形。世界でひとつだけのあみ人形。この面白さに惹かれ、今ではすっかり、あみ人形ファンになりました。さて、この本の翻訳は編み物作家の西村知子さんとの協働作業でした。西村さんは子ども時代をアメリカで過ごされ、今では日本での「英語で編み物」の第一人者です。そんな西村さんが今年1月に上梓したのが英文パターンのハンドブック。海外には日本のような誰にでもわかる編み図はなく、略記号を含む文章を読みながら編み進めます。このため、英語の用語や略記号がわからないと英語のレシピで作品を編むことはできません。この本はまるで辞書のように英語の編み物用語や略記号を網羅しています。西村さんのお人柄通り、とにかく細かいところにまで配慮が行きとどいた内容で、読んでいるだけでいろいろと勉強になります。英語の編み物レシピで作品を仕上げたい人必携の本です。

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イラスト:村越陽菜(むらこしはるな)