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北欧ときめき情報〜Wind from the north Vol.3

Vol.3 ノルウェーの音楽療法書籍が翻訳出版されました。

白夜の季節。北欧の自然が美しく輝く季節です。トレッキング、散歩、夜釣り、ベランダでの読書など、楽しみ方はいろいろです。私はノルウェー留学中、夏はいつもノルウェー語集中コースに通っていました。単語カードと夜食を持って、自宅近くの湖へ。水泳やバーベキュー、散歩を楽しむ人々に混じり、ノルウェー語の単語を覚えながら、湖の周りを回って、短い夏を楽しみました。あの時のヒヤッとした夏の空気は今でも覚えています。

音楽療法を学んでいたころ、わが師スティーゲにいつも言われていたのは、「文献を手にしたら、その文献の《参考文献》から読み始めなければならない」ということでした。そして、私はこの翻訳本のオリジナルCulture-Centered Music Therapyを手にした時、まずは一番後ろにある《参考文献》から見始めたのでした。何しろすごい文献の数。私はすぐに《参考文献》をコピーして、私が読んだものをマーキングしてみました。結果は予想どおり、90パーセントはマーキングをすることができませんでした。学生である私たちと時間を過ごし、コースリーダーとして忙しい日々を過ごしながら、どうやってこんな量の文献に目を通したのか……。そういえば朝8時に大学へ行くと、いつも彼の部屋には明かりがともり、窓際の机にむかう姿がありました。いまや「コミュニティー音楽療法」「文化中心音楽療法」を説く理論家として、世界の音楽療法界では先導的な立場にあるスティーゲの初めての翻訳本です。そして、日本で、ノルウェーの音楽療法の考え方と実践を知っていただける唯一の本でもあります。あれからマーキングした文献の数がほとんど増えていない不肖の弟子(私)も翻訳に参加しました。
  • 文化中心音楽療法 ブリュンユルフ・スティーゲ 著/阪上正巳 監訳/井上勢津、岡崎香奈、馬場存、山下晃弘 訳
    音楽之友社
    2008年5月
    ISBN 427612252X
    定価 本体5600円+税

イヌイットの少年の物語

ある日、ノルウェーの田舎のレストランでステーキを食べました。血なまぐさく、野性味のある味。それまでに食べたことのある牛、豚、鶏、羊の肉とは違う臭みのある肉です。「トナカイ肉のステーキよ、おいしいでしょ?」とレストランのオーナー。それまで《トナカイ》をサンタクロースが乗ってくる、何だか想像上の生き物のように感じていた私にはかなりの衝撃でした。そして、すごい国に来てしまったと改めて思ったのでした。さて、ご紹介する本はグリーンランドに住むイヌイットの少年イービクの日常と成長を描いた児童書です。1940年代に書かれているので、今のイヌイットの生活とは違いますが、彼らの伝統的な生活を知ることができます。父親を亡くしたイービクが一人で北極くまをしとめ、食する場面は大迫力です。著者のフロイゲンは極地探検家であったデンマーク人の父とグリーンランドのイヌイット出身の母の間に生まれました。また、素敵な挿絵はリンドグレンの「長くつ下のピッピ」のオリジナル本の挿絵を担当したニイマンによるものです。現在、グリーンランドはデンマーク領です。
  • 北のはてのイービク ピーパルク・フロイゲン 著 / 野村 泫 訳
    岩波書店
    2008年5月刊
    ISBN 978-4-00-114152-8
    定価 本体640円+税

バックナンバー

  • 坂元 勇仁
  • 井上 勢津
  • 田中 エミ
  • 国崎 裕

イラスト:村越陽菜(むらこしはるな)