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北欧ときめき情報〜Wind from the north Vol.2

Vol.2 〈この世の果て〉に暮らす姉妹の物語

最近、日本はちょっとした北欧ブーム。北欧デザインの家具や食器、北欧のスローライフを紹介する雑誌記事、はたまた北欧風のパンなど、あちらこちらで北欧という文字を目にします。ところで、「北欧」ってどこの国だかご存知ですか。「北欧」はアイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの5カ国を指し、その中でもスウェーデン、デンマーク、ノルウェーの3カ国は「スカンジナヴィア」と呼ばれています。

私が音楽療法を学んだのは西ノルウェーの片田舎。私の部屋の古い木の窓を開けると、眼下にはフィヨルドが広がっていました。「このフィヨルドの先に北海があって、その向こうに……」今でこそ、第2の故郷とも思える場所ですが、当時は〈地の果て〉にいるように感じたものでした。今回、ご紹介する本は、第2次世界大戦前夜、ナチスの迫害を逃れ、ウィーンからスウェーデン西部の小さな島にやってきたユダヤ人姉妹ステフィとネッリの物語です。里親や同世代の子どもたちとの〈この世の果て(ステフィの言葉)〉での暮らしの中で、二人は大切な何かをあきらめ、捨て、そして新しい何かを見つけていきます。この本は大きな話題となった4部作の第1作で、すでに第2作「睡蓮の池―ステフィとネッリの物語」も2008年5月に翻訳出版されています。ステフィの里親メルタの食卓にはしばしば魚と茹でじゃが芋という食事が登場します。私の下宿先、80歳のカーリもよく同じ食事を用意してくれました。台所に漂う魚とじゃが芋を茹でるにおい。今も昔も正真正銘スカンジナビアのにおいです。

ノルウェーからのおくりもの

昨年2007年はノルウェーの作曲家グリーグの没後100年ということで、さまざまなプロジェクトが行われました。その中のひとつがグリーグの歌曲を日本語の新しい詩で、しかも合唱曲に編曲するというものでした。前回ご紹介しました女声版合唱曲集とともに、歌曲集『子どものうた』が同声合唱曲に生まれ変わりました。この歌曲集の7曲はどれもノルウェーでは誰もが口ずさんだことのあるものばかり。同声合唱版でも「北極海の船のり」、「神様のおくりもの」、「つかのまの春」、「漁夫のうた」、「おやすみ ブラッケン」、「ノルウェーの山々」、「美しきわが祖国」と、ノルウェーの暮らしや雄大な自然が素朴に美しく歌われています。日本の子どもたちがこの作品を通して、ノルウェーに触れることができたらどんなに素敵だろうと思います。編曲は信長貴富さん、訳詞は村田さち子さんです。もともとのグリーグによるピアノ伴奏パートを生かした編曲となっているため、日本語訳詞による歌曲としても演奏が可能です。

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イラスト:村越陽菜(むらこしはるな)