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くみこん先生の保育士のためのアレンジ講座 Vol.4

貫輪久美子 Kumiko Nukiwa 作詞作曲家・編曲家・劇伴作家・音楽指導者
歌人で箏曲師範の母、祖母の弾く長唄三味線が流れる環境から幼少より邦楽に触れる。
2003年に混声合唱曲『小さな日々と大きな夢』(教育芸術社)を発表以降、多くの合唱作品が教育やサークルなどさまざまな歌の現場で歌い親しまれている。
近年はポップスアレンジも多く形態は合唱・吹奏楽・管弦楽・箏曲・リコーダーなど。
海外合唱団とのコラボ、劇伴制作も積極的に展開中。
https://note.mu/kumikonukiwa

こんにちは、くみこん先生です!
保育士のためのアレンジ講座へようこそ。
この講座では皆さんといっしょに保育の現場で役立つアレンジの方法について楽しく学んでいきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

本日はマコト先生からのご相談…

『子どもたちにウケる歌って、自分でも作れますか?アレンジを考えるようになってから、最近はそんなことも思ったりしているのですが……』

なるほど!なかなか向上心にあふれたご相談で嬉しいです!では今回はアレンジのヒントを織り交ぜながら、その意欲をしっかり受け止めてまいりますね。

まずはじめに確認。歌は“メロディー”と“歌詞”で出来ていますよね。くれぐれも歌詞は歌詞、メロディーはメロディーと別々のものと思わないでくださいね。メロディーと歌詞は一心同体!マコト先生や保育の場の皆さんに向けての講座ですから、現場に居るからこそできる発想と強みを生かさなきゃもったいないと思える内容からお教えしますね。堅苦しく作詞とは?作曲とは?…などお勉強風はなし。難しく考えないでいきましょう。

では今回のキーワードを。『言葉はリズム』です。

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これはただの音符の羅列に見えるかもしれませんが、実は『言葉はリズム』を意識して並べたのですよ。もちろん、なにも考えなくても拍子の拍数分の音符を並べることはできますよね?ん?どうかしら?やったことないですか?

とにかくもう一度【譜例1】を見てください。どうですか?これではまだ全然 “歌” になってないですね。では次に『言葉はリズム』を想定した歌詞を合わせてみますね!

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『みんな はじまるよ』という言葉を乗せてみました。言葉とリズムがひとつになりました。でもまだ “歌” になってないですね。それもそうです。肝心の“音(メロディー)”が無いですよね。

では“奏でるような言葉”=“自然ハナウタ”のように自由な発想でいきましょう!「みんな~はじまるよ~」っと、子どもさんたちに声をかけるように実際に今声を出してみてください。どうですか?伸ばすところや言葉を詰め込むようなところ、声の上げ下げ、ありますよね?これがハナウタ効果、つまり自然に奏でるようなということです。

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言葉とリズムだけの楽譜に音を入れてみました。『みんな』も『はじまるよ』も例えば絵本を読み聞かせる前に優しく興味を引き寄せる感じで話しかけると上に上がるイントネーションになると思うので、その声をかける時の語感を活かしてメロディーにしました。

またこの譜例のように、ピアノ伴奏無しで『タンタンタン』と手拍子やカスタネット、口で言うなど、やさしくて喜ばれそうな演出もいいと思いませんか? 先生が叩いてもいいですし、子どもたちに担当させてもきっと楽しいですよ。

そしてよく見るとこの2パート、メロディーを伸ばすところで掛け合いのようになっているのがわかりますよね?1つのパートは動きがあり、もう1つのパートは伸ばしだったり休符だったり。これもアレンジのヒントなんですよ。掛け合いになっている例としてはVOL.1の譜例7などがあります。さあ、こんなふうにたった2小節でも少しにぎやかになってきたところで…どうですか、もっとこの先が浮かんできそうでしょ?

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「はじまるよ~っ」と呼んだからには何かが始まりそうで、この続きの場面や動作が思い浮かべやすいですよね。例えば席についてお絵かきをしたり、先生のお話しを聞いたり。机の上の物を片付けることもあるでしょう。子どもたちを呼ぶ声、保育室、ホールへ移動、挨拶、廊下、着替え、おやつタイム、昼寝など、日常のスケジュール、アイテムや風景が見えてくればもう完成も目の前。

「曲なんて作れない」なんて思った方ももう大丈夫ですよね。さあ、最強のハナウタで遠慮せず先を作っちゃいましょう。皆さんは発想できる環境に居る強みをもっているんですから。

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子どもたちの動きと場面をイメージして、始まりとメリハリ、締めくくりなど歌らしさを意識した16小節の歌になりました。どうですか?え?メリハリとか締めくくりとかピンとこないですか?

例えば最初の4小節『♪みんなーはじまるよー』はちょっと急がす感じ、次の4小節『♪おせき について』はすこしゆったりと聞こえませんか?雰囲気の異なるフレーズを並べています。そして次の4小節『♪みんなーはじまるよー』は出だしと同じで、『♪はじまるよー』の音型と同じですが、音を高くして、曲の盛り上がりを作っています。最後は締め括りらしく最も終始感のある音、主音で終わっています。

音楽はこんなふうに音型やフレーズの繰り返しとそれらのバリエーションを伴って構成されていることが多いのです。バリエーション次第で一本調子ではなくメリハリが生まれます。歌詞を見ても、『みんな はじまるよ』と対になる歌詞が2回それぞれ違っています。
全体を見渡すと、前半8小節と後半8小節ではメロディーの音の上がり方に変化がありますよね。落ち着いたり、パーっと明るくなったり、終始感があったり、先に続くような感じだったりと、創作とアレンジでも曲を豊かにする方法には共通点があることをおわかりいただけると思います。

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ここでは【譜例5】の手拍子パートに音を付けてみました。例えば歌いながらこのようにピアノでリズミカルな掛け合いを弾けば、シンプルで短くてもすっかり歌らしくなります。楽しげな雰囲気を出すこともできます。歌いながら弾きづらかったらカスタネットやタンバリン、手拍子、足踏みなどで自由に!子どもさんたちにもどんどん参加させてください。

左手パートはコードのルート(根音)になっているところがほとんどです。VOL.2の譜例4(4小節目)VOL.3の譜例2(おわり2小節)など、これまでの回にもたくさん出てきましたよ。また、きれいな6度音程が『ごあいさつ』の『さ』に使われています。6度のことはVOL.1の譜例4VOL.3の譜例4もご参照ください。そうそう、この歌の題名、どなたかつけてくれませんか?

実は『言葉はリズム』というテーマにぴったりの曲があるんですよ。小さい子ども向けの歌『カロカロリコリコ』です(音楽専門館で販売中)。リズミカルで耳に残る言葉の繰り返しが印象的で、全体を通して擬音を使い、軽快でコミカルな曲になっています。もちろん遊び心だけではなくてちゃんと歌詞のテーマがありますよ。『野菜は栄養満点。しっかり食べましょう!』という感じですね。

カロカロリコリコ 貫輪久美子作詞・作曲

ほら、子どもの頃は嫌いだったのに大人になってから好きなった食べ物って、他にも結構あるなぁ」と思っているうちに、なんだかもう自分の歌が作れそうになってきたでしょ?

毎日言い慣れている会話や言葉。それとリズムが結びつき、そこにメロディーが組み合わさって歌が生まれました。このプロセスは、メロディーに伴奏をつけ、イントロ、間奏、エンディングを加え、ひとつの作品に進化させていくアレンジとも共通すると考えています。音楽を創るって楽しいですね!

アレンジ講座

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