ゆーたん音楽堂[音楽専門館]

週めくり ゆ〜たん音楽堂《音楽万華鏡》

ゆ〜たん音楽堂店主 つぶやき ささやき Vol.9

 今年の4月、初めてニューヨークへ行って来ました。マンハッタン島に降り立ち、エンパイアステートビルやロックフェラーセンターなど、今までテレビや映画を通じて見ていた巨大な建物を間近にすると、「おぉ、NYだぜ!」という思いにかられました。とはいっても、僕の住む東京だって、巨大ビルの数じゃあ負けていませんので、都会の風情には少しは自信があります。しかし、ニューヨークのすごさは何といっても、現在のNYの街の原型がすでに1940年代前半にできあがっていたということです。すでにいくつも出版されているNYの街の今昔を見比べた写真集を見ても、そのことが分かります。

 そして、音楽。そうです、ニューヨークは世界の音楽の中心地として、世界中のミュージシャンたちが毎日、この地にやってくるのです。ポップス、ロック、ヒップポップ、クラシック、ミュージカル、それから、ジャズ。この街は自分自身の努力(もちろん運も!)でアメリカンドリームを勝ち取り、世界の音楽シーンへ自らを旅立たせる場所なのです。まぁ、僕自身はそんな場所に身を置いたら、とても3日と持たないでしょうけど、そうやって生命を燃焼する生き方には、ある意味で潔さを感じます。

 日本に帰ってきて、しばらくたったある日、この『ジャズの本』に出会いました。今まで、あまりこういった種類の本を手にすることがなかっただけに、自分ながら不思議な思いがします。この本、もともとは1968年に翻訳本が出版されており、もう今年で40年の長きにわたって愛読されてきた本なのです。ジャズがどのような音楽的な要素で構成されているのか、ジャズはどうやって生まれてきたのか、ジャズを世界中に広めたアーティストにはどんな人たちがいるのか、そして、何よりもジャズの魅力はどこにあるのか、それらがとても洒落た語り口で、しかも、エッセンスを逃がすことなくつづられています。僕を幸せにしてくれる本でした。

 著者のラングストン・ヒューズは小説家であり、詩人として活躍した黒人作家です。そして、著者と翻訳をされた木島始さんとの間にはこの本が生まれるまで、深くあたたかい友情のきずなが結ばれていたことが、「訳者あとがき」を読むと分かります。

《セント・ルイス・ブルース》を演(や)ってくれ
死んだら、ぼくのために。
すばらしい 音楽が 欲しいんだ
あそこ 空の高みでは。

 これは、木島さんが訳したヒューズの「鎮魂歌へのリクエスト」の一節です。きっと、ヒューズは昔と変わらぬニューヨークの街を見ながら、大好きだったジャズに耳を傾けているに違いありません。

  • ラングストン・ヒューズ 著/木島始 訳
  • 晶文社
  • 1998年4月発売
  • ISBN 4794912595
  • 定価 本体2,100円+税