ゆーたん音楽堂[音楽専門館]

週めくり ゆ〜たん音楽堂《音楽万華鏡》

ゆ〜たん音楽堂店主 つぶやき ささやき Vol.2

 「驚愕の一冊。ページを開いたら面白くてやめられない」と帯に書かれた宇野功芳さんの推薦文に反応して、手にしてしまいました。 どうも、こんなフレーズに弱い…。

 今から20年くらい前、まだ学生気分の抜けないころでしたが、毎月のようにコンサートを仲間で企画していたことがあります。主には声楽のコンサートだったのですが、その時に困ったというか、探すのにひと苦労したのが作品のデータでした。
 もちろん超メジャーな曲ならばいくらでもアクセスする方法はあるのですが、演奏者の持っている楽譜だけが唯一の手がかりのケースもあるわけです。しかもそんな場合に限って、全く解説らしきものがない…。そんな時は秋葉原のI電気に何度も足を運んでは、やっと一枚だけ存在する「輸入レコード」を探し出し、そのジャケットの裏にある解説を訳して、やっと公演に間に合わせるという作業を繰り返していました。

 編集者であり、音楽ジャーナリストである平林直哉さんが今回出版されたこの『クラシック名曲初演&初録音事典』を書店で見つけた時は、<おぉ、こんなコンセプトがあったんだ!>と思わず声を出してしまいました。
 作曲家の紹介、楽曲の概要、世界初演データ、そして、僕が仕事柄ひかれる初録音データなど、作品について知るための情報がいっぱい散りばめられています。しかも、初演や初録音をめぐる人間模様や演奏家とレコード会社間の駆け引きなど、血の通った「音楽史」としても楽しむことができるのです。

‐こんな本が20年前にあったらどんなに楽だったろうな‐

 と、ついつい安易に流れる僕は思ってしまいますが、平林さんはこの本の完成に10年の歳月を費やしたといいます。並たいていの努力ではないですね。だからこそ「座右の書」として、いつもデスクの上に置いておきたい一冊としてお薦めします。

 ちなみに、本書には作曲家74人、374曲の<世界はじめて物語>が掲載されています。

  • 平林直哉 著
  • 大和書房
  • 2008年3月刊
  • ISBN 4479391711
  • 定価 本体 3,000円+税