ゆーたん音楽堂[音楽専門館]

週めくり ゆ〜たん音楽堂《音楽万華鏡》

ゆ〜たん音楽堂店主 つぶやき ささやき Vol.11

 ちょっと前、「男と生まれたからにはなってみたいもの」なんていうアンケートをやると、必ずその上位に入っていたのがオーケストラの指揮者でした。今となっては、そんな「男と生まれたからには……」なんていう勇ましい前提すら、時代の空気にそぐわないものになってしまいましたが、とにもかくにもオケの指揮者という職業は男子のあこがれの的だったわけです。

 ところで、皆さん、そのオーケストラについてですが、一般的にどれだけのことをご存知ですか? 「オーケストラってどんな人が集まっているの?」「オケの運営って、どうやっているの?」「団員のお給料っていくらくらいなの?」「どうしてオケは赤字でも存続しているの?」などなど、考えてみるとオーケストラにはなぞがいっぱいありますね。そもそも呼び方からして「オーケストラ」「管弦楽団」「交響楽団」といろいろな呼び名があり、混乱してしまいます。

 そんな皆さんの疑問に懇切丁寧にこたえてくれるのがこの本です。著者の大木裕子さんは現在、大学で経営学を教えている方ですが、キャリアのスタートはプロオーケストラの団員でした。つまり、オケの現場、日常を知り尽くしたうえで、それを新たに学問の対象として取り上げているわけです。いわば、“オーケストラを経営学的にみる”ビジネス&教養本なのです。その証拠に本書の第4章では「五つのトレードオフ」「ファンを創るマーケティング戦略」「トラアイル層をいかにリピーターに育てるか」といった項目も並びます。きっと、視点を変えてみると、これは合唱団や吹奏楽団、あるいは劇団などの運営にもよいアドバイスを与えてくれるはずです。

 大木さんは言います。「人材の多様性は、よりダイナミックなイノベーションの原動力となる。クリエイティブでイノベーティブな組織作りは、オーケストラにも企業経営にも共通するテーマであり、企業がオーケストラから(もちろんその逆も)学べることは多いはずだ。」 オーケストラもしっかりと社会に根付きながら発展していく、そんな時代に入ってきているのかもしれません。

  • 大木 裕子 著
  • 東洋経済新報社
  • 2008年10月発売
  • ISBN 4492501886
  • 定価 本体1,600円+税