ゆーたん音楽堂[音楽専門館]

週めくり ゆ〜たん音楽堂《音楽万華鏡》

ふみの ミュージック・スクランブルVol.1

篠原甫弥

 初めまして、篠原甫弥(ふみ)と申します。
 最終回を迎えた茶畠愛さんに代わって、新しく連載を担当させて頂くことになりました。どうぞよろしくお願いします。
 私の好きな音楽のジャンルは、クラシックからロック、ジャズ、果てはエレクトロニカにサウンドトラックとほんとうに「スクランブル」なので、記念すべき第一回目はどんな音楽を紹介しようかすごく悩んでしまいましたが、最初はあえて「音の聴こえない音楽」を紹介したいと思います。

  • ミヒャエル・エンデ 著
  • 上田真而子、佐藤真理子 訳
  • 岩波書店
  • 1982年6月7日刊
  • ISBN 4-00-110981-6
  • 価格 本体2,860円+税

 この物語の中盤、主人公のバスチアンがアトレーユと白い幸いの竜フッフールにようやく出会えた日の夜に、その音楽が登場します。

――夜空高く、銀の都と涙の湖の上を輪を描いて飛びながら、フッフールは青銅(ブロンズ)の鐘の音を響かせた。詞(ことば)のない歌、全き幸せの、大らかな単純なメロディーだった。聞くものの心がおのずと開き、広々と広がっていくメロディーだった――

 涙の湖に浮かぶ美しい銀の都アマルガントでの夜、二人は初めてフッフールが歌うのを聴きます。それは今まで耳にした、あるいはこれから耳にする美しい音色のすべてをはるかにしのぐ歌声だったと書いてあります。

 この場面を読んだとき、それはいったいどんなに美しい音楽だったのだろうと、「文字で描写された音楽」に私は思いをはせ、聴いてもいない音楽に、初めてオーケストラの生演奏を聴いた時のような感動をおぼえたのでした。
 音のあふれかえる現代社会の中、たまには静かな空間で本の世界の中の音楽に想像を膨らませてみるのも楽しいものです。

 ちなみにこの作品は文庫版も出ておりますが、この物語の世界観に浸るならば断然ハードカバーの方をお勧めします。その理由は読んでいただければ、分かってもらえると思います。
 あかがね色の表紙と二色刷りの本文…その美しい装丁がきっと読む人をファンタージェンに連れていってくれるでしょう。