ゆーたん音楽堂[音楽専門館]

週めくり ゆ〜たん音楽堂《音楽万華鏡》

当世女子大生的音楽事情 Vol.7

第7回は、私のポジティブ事情について。

 「左手のみで演奏するピアニスト」の記事を新聞で見かけてから、その方のことはずっと心の片隅にありました。左手だけでどんな演奏をするのだろう? 一度聴いてみたいなぁ、と。しかし、記事を読んだのはだいぶ前のことで、お名前も分からないまま……。
 そして、先日、書店でとうとう(勝手に)再会することができたのです。その方は「舘野泉さん」というピアニストでした。
  • 舘野泉 著
  • 佼成出版社
  • 2008年3月刊
  • ISBN 9784333023202
  • 定価 本体1500円+税

 病を乗り越えて、左手のみで演奏するようになった「から」、だれにもできない特別な演奏ができるようになった、というようなストーリーを私は思い浮かべていました。しかし、「人によくそう言われるけれどもそれは違うのだ」ということを、舘野さんは繰り返し述べています。「特別なことではなく、ただ“ピアノを弾くのが好き”という、その思いのみで自然にここまできたのだ」と。
 私は、舘野さんは音楽家として最強にポジティブな方だと思います。この本で舘野さんは「右手でもまた弾けるようになれるよ」と人から言われても、「左手のための曲だってあるじゃないか」と言われても釈然とせず、もやもやしていたころのことも、その時の気持ちのまま、正直に述べられています。そのうえで今、左手だろうが両手だろうが関係なく、「ただ、音楽全体を表現しよう」とおっしゃっているのです。人って、困難にぶつかったら悲劇のヒロインになり、乗り越えたら乗り越えたで、ウジウジしてたころの自分は封印!してしまう事が多いのではないでしょうか。当世女子大生の私が、いくつもの経験を重ねてこられた舘野さんと比べるのもおかしな話ですが、舘野さんの場合、もともとポジティブで自由な気持ちを持った方なのだ、ということが、どのように育ってきたのかが読むとよく分かります。
 また、本の中で左手のための曲がたくさん登場します。舘野さんは「まだまだ少ない」とおっしゃっていますが、私はこんなにあるものなんだ、と驚きました。聴いてみたい曲ばかり、いえ、ぜひ弾いてみようと思います。そこには、きっと新しい音楽の発見と喜びがあるはずです。