ゆーたん音楽堂[音楽専門館]

週めくり ゆ〜たん音楽堂《音楽万華鏡》

当世女子大生的音楽事情 Vol.10

第10回は、私たちのBGM事情について。

 現代人のBGM摂取過多については、既に多くの人が指摘しています。しかしその音楽を止めたところで、聴こえてくるのは車のエンジン音、空調機や家電、パソコンのブーンという機械音、そして電子音……、かえってイライラさせられるのではないでしょうか。お店で交互に流れる宣伝と音楽も、機械の低くうなる音も好きじゃない私の耳には、たいていヘッドフォンがあてられています。せめて好きな音楽をと……そうですね、結局はBGM摂取過多なのです。
 そもそも「BGM」って言っちゃってるくらいですから、音楽だろうと機械音だろうと右から左で、その場限りのお付き合い。生活の中の音に、音「のみ」に集中することなんて、そう言えば滅多にないかも。好きなことをしている時の音、毎日必ず行く場所の音、好きな歴史上の人物の声、いま頭で思い描くことができますか?

  • 三宮麻由子 著
  • 文藝春秋
  • 2008年1月10日刊
  • ISBN 9784163698700
  • 定価 本体1900円+税

 取り上げられているのは、当世女子大生にはちょっと敷居の高い(でも、あこがれの)松尾芭蕉、柘植櫛、寄席、鼈甲から、鈴、時報、花火、ピアノ、テレビの効果音といった身近なものまで。著者の三宮さんが気になっているもののプロに会いに行き、そこの音風景を鮮やかな言葉で綴っています。時報のお姉さんはどんな人なんだろうとか、容姿と業績しか知らない歴史上の人物の声とか、テレビドラマでの晴れた日と雨の日の足音の違いとか、身近なテーマだけれど、思いも寄らなかった視点(聴点?)の発見になぜかどきどきしたり。

 寄席や鼈甲作りなど趣のあるものは私にとっては身近ではないので、私の周りには耳をすますべきたいした音はないと思っていたけれど、人によって違うパソコンのキーボードを打つ音、自動ドアが開いたときに流れ込んでくるパチンコ屋の喧噪、身近なだれかの声、現代的だろうと機械的だろうと、慣れ親しんだ音風景に改めて耳をすますと、思わぬ愛着がわいてくるものですね。とりあえず、誕生日が同じなので勝手に親しみを感じているクララ・シューマンは「落ち着いた少し低めの、でもよく通る声」で決定です。私のなかでは……。